不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

売買契約が合意解除された場合でも、仲介業者は仲介手数料を請求できるか

【仲介業者からの質問】

当社は、土地を所有する会社様より売却のご依頼を受け、土地の売買の元付け業者として媒介契約を締結し、売却活動をしてきました。

買主が見つかり、無事に売買契約の締結となりました。

 

しかし、残代金の決済前に、土地の面積を巡って売主様と買主との間で行き違いが生じ、売主様が契約を解除してしまいました。

当社としては、契約が成立しましたので、売主様に仲介手数料を請求したのですが、売主様からは「媒介契約書には、「残金決済時」に支払いをする」という記載がある。今回は残金決済前に契約解除となったから仲介手数料は支払わない」と言われてしまいました。

 

当社の仲介手数料の請求は認められないのでしょうか。

【説明】

本件は、東京地方裁判所平成21年1月16日判決の事例をモチーフにしたものです。

仲介業者が請求する仲介料請求権は,仲介にかかる売買契約が成立したことにより当然に発生する報酬請求権と解されています。

したがいまして、売買契約締結後に売買当事者に債務不履行等があり,結局売買契約が履行されずに終わったとしても報酬請求権は消滅しないと解されますので、仲介料請求権は請求ができる、という結論になります(判決でも同様の結論となっています)。

なお、媒介契約書や仲介手数料支払約定書には,仲介手数料の支払時期が「残金決済時」に支払いをする旨の記載がされていることが多いです。

この点についても、裁判所は、これは,通常,売買契約において定まった残金決済時を意味するものというべきであって,単に支払期限を定めたものに過ぎず、仲介手数料の請求権自体は、売買契約の成立によって発生するということに影響はない、と判断しています。

不動産の売買契約に関わる仲介業者の仲介手数料については、この他、契約成立後に手付解除された場合などにも問題となることが多いですが、この場合も、特に報酬の発生事由について特約を締結していない限りは、売買契約成立時に仲介手数料は発生すると解されています。

したがいまして、売買契約成立後に仲介手数料の支払を拒まれる場合、媒介契約の中で仲介手数料の発生時に関する特約が定められていないかどうかを検討することが肝要です。


この記事は、2021年5月20日時点の情報に基づいて書かれています。

公開日:2021年05月20日 更新日:2021年07月07日 監修 弁護士 北村 亮典 プロフィール 慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。