不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

家賃滞納者がいる賃貸物件を相続した場合の不動産の有効活用方法

Q 私の父が持っていたアパートを相続しました。

200坪の土地に、2DKが4部屋の建物が建っています。

今は4部屋の内、1部屋だけ入居者がいますが家賃が遅れがちで、もう三ヶ月も溜まっています。

他の3部屋は募集をしていますが、なかなか契約が決まりません。

木造で21年も経過しているので、古いせいもあるかもしれません。

家賃が遅れている人への対応や、空室の悩みで悩んでいます。

いっそのこと、手放した方がいいでしょうか??

A せっかく遺産として相続した不動産ですから、まずは保有することを検討して、それが資金的な問題などで不可能な場合には売却を検討する、という順序で考えるのが良いでしょう。

保有が不可能で売却するとなった場合、このような不動産の場合、

①現状で売却、②満室にして売却、③家賃滞納者の立退完了後に更地にして売却

という3つの手段が考えられます。

以下、順番に検討していきましょう。

1 現状で売る場合

空室率が高いので、このままでは高値での売却が期待できません。

なお、売却する場合、家賃を滞納している入居者のことは買主への告知事項になるのではないかという問題があります。

買主がこういった賃貸物件を購入するには、家賃がしっかり入ってくるということが大きな動機になりますので、やはり家賃滞納者の存在については買主に重要事項説明で告知しなければなりません。

したがって現在遅れているということであれば、告知事項になります。

また、過去に度々遅れたことがある、ということも告知事項になります。

2 満室にして売る

上記の通り、現状で売る、となると相場よりも低い値段での売却も余儀なくされる可能性があります。

そこで、ある程度時間的、資金的な余裕が有るのであれば、売却するにしても、満室にしてから売るということも検討の余地があります。

管理会社に管理・募集等を委託している場合、そもそも管理会社がきちんと募集をしているのかということをチェックする必要があります。

その上で、適性家賃の設定やリフォームの必要性なども検討するなど入居者を呼び込む対策を検討しなければなりません。

もっとも、簡単に満室になるなら、売却しなくても良いかもしれませんが・・・

3 家賃滞納者を立退きした後で更地で売却

土地の形状や立地条件によっては、更地の状態で売却する方が高い収益を上げることができる可能性もあります。

そこで、建物を解体して更地にする必要がありますが、その前提として家賃滞納者を退去させる必要があります。

家賃滞納者へ立退きを求める場合、家賃の滞納が3ヶ月分以上に及んでいれば、裁判に持ち込んでもほぼ間違いなく退去が認められます。

もっとも、裁判を起こして、さらに強制的な追い出し(強制執行)まで行うとなると、弁護士費用や強制執行の費用も含めるとかなりの高額になってしまいます。

そこで、まずは内容証明郵便で解除通知を出して、滞納者が自発的に退去するよう促すところから進めます。内容証明郵便を出しても、滞納者が全然反応がないようであれば、弁護士名で内容証明郵便を出し、さらに訴訟提起、という流れで退去の手続を進めることになります。

また、このケースでは建物に対して土地が広くて有効活用できていない可能性が高いと考えられます。

そこで、土地を半分に分筆して売却するということも検討できます。

4 まとめ

いずれの手段を取るにしても

・家賃滞納者への対応

・空室の改善方法の検討

・投資効率の改善

同時並行して検討して行く必要があります。


2015年11月30日更新

公開日:2015年12月01日 更新日:2020年06月20日 監修 弁護士 北村 亮典 プロフィール 慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。