不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

低周波音の特徴(住宅設備等から生じる低周波音の問題)

低周波音とは100Hz以下の周波数の音のことをいいます。

この低周波音には、中・高周波音(100Hzを超える周波数の音)には無い、低周波音に特有の特徴があります。

主に、以下の3つの特徴が挙げられます。

1 家屋の防音効果が乏しいこと

通常は、家の窓や壁は相当の遮音量を持ちますので、家の中で窓を締め切っていれば外の音はかなり遮音されることになります。

これは、耳で感知される中・高周波音についてであり、耳では感知されにくい低周波音については、一般的には家屋によって遮音されにくいと言われています。

そのため、低周波音に対しては、二重サッシ等の防音工事の効果はほぼ及ばない可能性があるという指摘もされています。

なお、現実には、同じ音源(騒音発生源)から中・高周波音と低周波音の両方が発生していることが多く、中・高周波音と比較して、相対的に低周波音のレベルが低いと、低周波音は知覚されないことがあります。

しかし、家屋の中に入った場合、または防音工事等でさらなる遮音措置を施せば、中・高周波音は多少軽減されたとしても低周波音は軽減されないため、遮音すれば相対的に低周波音が増強されることになり、それまで中・高周波音に紛れて必ずしも知覚できていなかった低周波音が明確に聞き取れることとなるのです。

この点については、「一般的に、窓を開けている場合は、屋外からの騒音成分により低周波音が隠れて聞こえなく(感じなく)なることがある。一方、窓を閉めた場合には、騒音成分のみが遮音され低周波音が際立って聞こえる(感じる)ことがある。」との指摘もされています(環境省環境管理局大気生活環境室「低周波音問題対応の手引書」3頁)。

2 屋内で共鳴して屋外よりも音圧が大きくなること

低周波音は屋内において共鳴することが多く、これによって、低周波音の影響はより大きくなります。

すなわち、家屋の窓や壁を透過した低周波音が屋内で共鳴するような場合は、屋内で定在波が生じることとなるため、屋外よりも屋内の方がレベルが高くなることがあります(「風力発電施設からの低周波音の予測/評価について(第7回風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会資料)」)。

ここで、定在波とは、部屋の中で、壁と壁の間の距離と音の波長の半分が一致すると、音の干渉により室内で音の分布が一定となり、壁際の音圧が大きく部屋の中央の音圧が小さくなる現象が発生します。この状態の音波を定在波といいます。

3 距離減衰しにくいこと

低周波音も物理的には音波であり、その伝搬特性は中・高周波音と大きく変わるところはありません。

しかし、低周波音の場合、音圧が大きい場合も少なくなく、その場合は長距離にわたって伝搬し影響を及ぼすこともあります。

このような長距離伝搬の場合、高い周波数の音の方が減衰が大きいため、伝搬距離が大きくなるに従って、低周波側の成分が卓越してきます。

このような低周波音の伝搬特性の関係から、音の伝搬距離が大きくなった場合、可聴域(すなわち、中・高周波音)の周波数帯は減衰し、超低周波音の周波数領域が卓越し、人には直接的に感知されませんが、建具などのがたつきで間接的に低周波音の存在が感知され、苦情となることもあります(「騒音制御工学ハンドブック」397頁参照)。


2018年10月8日更新

公開日:2018年10月08日 更新日:2020年06月20日 監修 弁護士 北村 亮典 プロフィール 慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。