不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

低周波音とは(住宅設備等から生じる低周波音の問題)

世の中には多くの「音」が溢れていますが、それが、人にとって許容できない、もしくはうるさいと感じるレベルになれば「騒音」として認識され、被害・紛争を発生させるものとなり得ます。

近隣住居や工業施設から発生した「騒音」については、それが「受忍限度」を超える大きさの音の場合、損害賠償の対象となり、そのレベルが著しいものであれば差止の対象にもなります。

このような、騒音に対する差止訴訟や損害賠償請求訴訟というのは昔からよくある紛争類型の一つです。

「うるさい」音、すなわち「大きな音」が騒音として問題になることは、ある意味当然のものとして認識されていますが、近年はこれに加えて「低く重たい音」、すなわち「低周波音」の被害というものが問題提起されています。

これは、「大きい音」「うるさい音」ではないものの、低く重たい音が途切れることなく聞こえてきて「うっとおしい」、「気分が悪くなる」、「振動感を感じる」、「音が気になって眠れない」といった被害の訴えを生じさせるというものです。

このような低周波音は、身近な例で言えば、大型の冷蔵庫だったりエアコンの室外機から発せられる低い音(「ブゥーーン」というような重く低い音)などが挙げられます。また、最近はこれらに加えて、エコキュートやエネファームなどの給湯器から低周波音が発せられると被害を訴える方もいらっしゃいます。

低周波音の問題というのは、環境省によって、今から10年以上前に、苦情の原因となるのはどの程度の騒音レベルか、という点等に関して調査・研究も行われています。

しかし、規制する基準というものは未だ存在せず、一般の方々にとっても、騒音問題の中でも、この低周波音に対しては騒音としての自覚が無かったり、まだまだ低周波音というものに対する理解が浸透していないのが実情です。そのために、高レベルの低周波音を発生させていることに自覚がなく、近隣住居等との間に紛争を生じさせてしまい、さらに発生源となる機器を設置した施工業者やメーカーを巻き込んだ紛争にまで発展してしまうということも生じ得るのです。

低周波音については、日本においてはまだ環境基準や規制基準がない状況ですので、紛争となった場合に、当事者全員が納得できるような解決に進めることには多大な困難を伴うことも多いです。

したがって、まずは、各人が、低周波音というもの、そこから生じうる被害というものの存在を認識するということが重要であると考えています。

そこで、これから数回に分けて低周波音とその被害について解説をします。
まず今回は、「低周波音とはそもそも何か」ということを解説します。

まず、「音」とは、空気の微小な圧力変動であり、その変動が耳に伝わって鼓膜を振動させることにより、人は音として感じます。

また、1秒間に振動する回数を周波数といい(ヘルツ(Hz)という単位で表される)、回数が多ければ高い音、少なければ低い音として聞こえます。

一般に人が聴くことができる音の周波数範囲は20Hzから2万Hzとされています。これを「可聴域」といい、可聴域の範囲外である20Hz以下の音を「超低周波音」、2万Hz以上の音を「超音波」といいます。

人の耳の感度は、空気が振動する際の圧力変化(音圧)を指標とすると、2000Hzから5000Hzあたりが最も感度が良く、低音域になるほど感度が鈍く聞こえにくくなります。

特に100Hz以下では急速に感度が低下するので、環境省は100Hz以下の音について、超低周波音を含めて「低周波音」と定めています。

したがって、低周波音による被害が問題となる場合は、この100Hz以下の騒音レベルがどの程度発生しているか、ということが問題把握のための出発点となります。


2018年10月1日更新

公開日:2018年10月01日 更新日:2020年06月20日 監修 弁護士 北村 亮典 プロフィール 慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。東京弁護士会所属、大江・田中・大宅法律事務所パートナー。 現在は、建築・不動産取引に関わる紛争解決(借地、賃貸管理、建築トラブル)、不動産が関係する相続問題、個人・法人の倒産処理に注力している。