不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

賃貸人が雨漏りの修繕を行わなかったことについて、慰謝料の支払いを命じた裁判例

【賃貸オーナーからの質問】

私は、一戸建てを所有しているのですが、これを居住目的で賃貸することにしました。

家賃は一月15万円です。

しかし、賃貸して賃借人が住み始めてから半年後頃より「天窓部分から雨漏りがある」というクレームがありました。

最初のクレーム時には修理業者を手配したのものの、コーキングの劣化等も確認されておらず,雨漏りの原因を特定することができないと言われましたが、雨漏りの可能性のある箇所に撥水剤の散布などの応急処置を施しました。

しかし、その後間もなく「また同じところから雨漏りしている」と言われ、業者を手配しましたが、同様に業者からは「原因が特定できない」と言われましたが、このときも応急処置的なものは行ってもらいました。

それからしばらくは何もなかったのですが、その2年後に再び同じ箇所から雨漏りしていると言われ、同様に業者に点検と応急措置をしてもらいましたが、やはり原因が特定できず、コーキングなどの応急措置をしました。

その後も2年毎くらいの頻度で雨漏りが生じているとのクレームがあり、その度に業者を手配するものの、これまでと同様に原因が特定できずコーキング処理等の応急措置をする、ということの繰り返しでした。

私からは、賃借人にクリーニング代を支払ったり、損害金として3万円をお支払いするなどの対応もしています。

しかし、この度、賃借人から「ここに9年間住んでいて、10回も雨漏りが生じている。雨漏りのせいで建物の使用が妨げられたのだから、その分を損害として請求する。慰謝料も請求したい。」と言われています。

私としては、雨漏りのクレームがある度に業者を手配し調査したものの、どうしても原因が特定できなかったわけであり、賃貸人としてはやるべきことはやったと考えています。

それでも責任を問われるのでしょうか。

【説明】

本件は、東京地方裁判所平成25年3月25日判決の事例をモチーフにしたものです。

賃借人は、雨漏りが度々生じたことについて、賃貸人の修繕義務違反を主張して、

・雨漏りのため水浸しになる範囲は,居住スペースの30%程度に及んでいることから,本来約定賃料から30%相当額を減額すべきところ,原告はその分を余分に支払い続けたのであって,過去の既払賃料のうち3割相当額が損害である

・雨漏りにより、多大な精神的苦痛を被り,その慰謝料は49万2000円である

と主張して、賃貸人に訴訟を起こしました。

これに対して、賃貸人側は、冒頭の設例のように、

・雨漏りが生じたと言われた度に修理業者を手配して調査するなど対応している

・雨漏りの原因が特定できず、雨漏りの発生を防止するまでの義務はない

と反論しました。

裁判所の判断は・・・

この事案で、裁判所は、賃借人が主張した賃料の30%分の損失については

「雨漏りによって水に浸された範囲やその量,水に浸された家財道具の種類やその程度等を確定できず,原告(賃借人)も雨漏りがあったときには被告(賃貸人)に対し対処を求めたものの,それ以上にクレームを申し立てないで,契約を更新して住み続けていたのだから,原告が本件建物を使用するにあたって,3分の1に及ぶ30%程度ものスペースの使用が日々妨げられていたなどとは認めがたいというべき」

と述べて、その請求を否定しました。

他方で、慰謝料請求については、以下のように述べて、45万円という慰謝料を認めています

「雨漏りの発生について,賃貸人である被告は,本件建物の修補義務に違反しているというべきであり,その原因がわからないことは,賃貸人の修補義務を免責する根拠になるとはいえない。

かえって,賃借人である原告にしてみれば,雨漏りの原因がわからず,それがいつ発生するかも予測できないのであって,雨漏りが発生したことによって,相応の精神的苦痛を受けたというべきである。」

「その慰謝料については,賃貸人が原因不明との理由で修補義務を尽くしていないこと,比較的多数回の雨漏りが発生していること,過去の雨漏りについては解決済みとはいえ,雨漏りの回数が重なれば,相応して精神的苦痛も増大すると考えられることを考慮し,合計45万円とすることが相当である。

雨漏りというのは、原因の特定が難しい瑕疵現象の一つですが、原因特定が難しいからと言って、賃貸人としてその修繕義務が免責されるものではない、という考え方をこの裁判例は示していると考えられます。


この記事は2021年11月21日時点の情報に基づいて書かれています。