築年数が50年以上経過し老朽化しているようなマンションで、なおかつ耐震性も危ういというマンションが増えてきていると言われています。このような場合に対処するために、マンションの管理組合としてどのような選択肢があるかについて、簡単に解説します。

対応策として主な選択肢は以下の3つです。

1⃣ 耐震改修の修繕を行う

2⃣ 建替を行なう

3⃣ 敷地の売却を行なう

 

1 耐震改修の修繕を行う

メリットとしては、建替よりも費用がかからない、という点にあります。

他方で、デメリットとしては、耐震改修をしても、今後さらに改修の費用はかさみますので、問題の抜本的解決にならないということです。

2 建替を行なう

メリットとしては、新しいマンションを建てられて資産価値が上がること、また、建替の場合、原則として50%容積率の緩和が受けられますので、新たな区分所有スペースを増やすことができ、その部分を売却して建替費用の一部に充足できることです。

他方で、デメリットとしては、現状の住民(区分所有者)にとっては建替費用を捻出するためにある程度の持ち出しが発生する可能性があること、また、建替に至るまでの区分所有者の合意の形成や、建替工事に時間がかかるということが挙げられます。

3 敷地の売却を行なう

メリットとしては、敷地が高く売れれば、区分所有者はその売却益で他の物件を買い替えできること、売却までの期間が短くて済むということが挙げられます。

他方で、デメリットとしては、敷地が高く売却されないと結局意味が無いこと、区分所有者の大多数が転居を決断してくれないとこの方法はとれないことが挙げられます。


2015年12月14日更新

Q 私は、ターミナル駅の近くに、親から相続した店舗用の木造2階建ての建物を所有しています。土地は借地で、3年後に更新を迎えます。

現在は、建物を貸していて、飲食店舗として使用されています。

建物は築30年経過で老朽しており、修繕するのも費用がかかります。

また、3年後の更新時に更新料を払わなければならないと思いますので、そのお金の問題もあります。

金銭的なことを考えると、いっそのこと借地権と建物ごと売却した方が良いのかもと思っています。

借地を売却する際にはどのような段取りで進めるのでしょうか。

ちなみに、ここ数年、地主の方は認知症で施設に入院しているようで、その息子さんが借地の管理などをしているようです。

また、仮に売却せずに保有し続ける場合、建替えや大規模修繕をするための段取りや、3年後の借地の更新の際の更新料がどれくらいかかるかということも知っておきたいです。

A 成年後見手続も視野に入れながら、借地の売却手段を検討する必要があります。また、更新料が相当大きな金額になる可能性もありますので、資金の準備が必要です。

1 借地の売却の段取り

借地を売却する場合、地主の承諾が必要となります。

もっとも、借地だけで売却するとなると買い手がつきにくかったり、売却金額が低くなる傾向があります。

したがって、借地を売却するのであれば、地主と相談して

底地と共に売却する

もしくは、地主に買い取ってもらう

という手段も検討した方が良いでしょう。

2 地主が認知症の問題点

借地を売却する場合のほか、借地上の建物を建て替えたり大規模修繕する場合にも、地主の承諾が必要となります。

しかし、地主が認知症であり、認知症の程度が重く、上記の「承諾」の法律的な意味すら理解できないような状況の場合、地主は法律上有効な承諾ができません。

このような場合、地主に成年後見人が選任されていれば、成年後見人の「承諾」を得るということをすれば足りますが、仮に成年後見人すら選任されていない場合には、上記の地主の承諾の得るための裁判(借地非訟と言います。)を裁判所に起こす必要があります。

そして、地主は認知症で当然ながら裁判を遂行することができないですから、地主に代わって裁判の対応をする代理人(特別代理人と言います。)を裁判所に選任してもらうという手続をしなければなりません。

この特別代理人というのは、裁判所が、裁判手続のために地主の代理人として選任するのですが、基本的には弁護士が選任されます。

裁判所に特別代理人を選任をしてもらうにあたっては、この特別代理人となる弁護士が裁判手続を行うための「報酬」に該当する金額を、こちらから予め裁判所に納めなければなりません。

この「報酬」に該当する金額がいくらかという問題がありますが、この金額は特別代理人となる弁護士がどの程度の業務を行うかによって様々ですので一概には言えません。

特別代理人の業務がそれほど無いと見込まれる場合は10~20万円程度となることが多いですが、通常の裁判手続でそれなりの業務が予定されている場合は、50万円前後になることもあるようです。

3 借地の更新料

借地契約が更新される場合、契約書に更新料の支払いが規定されている場合には更新料が発生します。

更新料の相場は、地域によっても様々ですが、一般的には、借地権価格の5~10%と言われています。

したがいまして、更新時期を見据えて、概ねそれだけの資金を用意しておく必要があります。


2015年11月30日更新

Q 父は、高齢で認知症であり、日常会話もできないくらい知的能力が衰えています。

父は、昔から店舗兼共同住宅のビルを1棟所有しており、店舗にはテナントが入居しています。契約期間が三年間ですが、一件のテナントが今年の7月に契約終了になります。ビルは老朽化していて、修繕の費用の工面も大変ですので資産の売却も検討しなければいけない状態です。そこで、テナントの契約は解除しようとしています。

父が認知症であることを考慮すると、契約終了させるに当たって何か注意しなければならないことはありますか?

A まず、お父様に成年後見人を選任した上で、テナントとの賃貸借契約解除の交渉をすることになります。

お父様が認知症であり、日常会話もできないくらいとのことですので、認知症の程度は相当重症と見受けられます。

認知症の程度が重い場合、契約の締結や、解除といった法律行為を行うことができません。

このような場合に、お父様を代理して契約などの法律行為ができるのは成年後見人のみとなります。

したがって、まず、家庭裁判所に成年後見人の選任を申立てて、お父様の成年後見人を立てる必要があります。

成年後見人にはお子様が就任することも可能ですが、お子様の財産状態に問題があったり、お父様の推定相続人にあたる他の親族の同意が得られなかった場合には、裁判所により弁護士等の専門家が選任されることになります。

成年後見人が選任された後で、成年後見人がテナントに対して契約の解除(更新の拒絶)の通知を行うこととなります。

しかし、この契約の解除(更新の拒絶)というものは、簡単には認められません。

多くの方は、

「契約期間が満了したから、契約も解除できる」

と考えがちですが、賃貸借契約に関して言えば、その理屈は通用せず、契約期間が満了しても、借主が契約の継続を望めば、基本的には契約が更新されると考えた方が良いでしょう。

したがって、仮に成年後見人より、テナントに対して契約の解除(更新の拒絶)の通知を行ったとしても、テナントが

「今後も契約を更新したい」

と主張してきた場合には、契約の解除は即認められません。

契約を解除するためには、契約を解除(更新を拒絶)するための「正当事由」というものの主張・立証をテナントに対して行い納得してもらうか、それでも納得しなかった場合には裁判を起して、裁判所に契約の解除(更新の拒絶)を認めてもらうことになります。

この「正当事由」とは、例えば、ビルが老朽化して取壊等が必要な状態であるとか、相当程度の立退料の提供がある、ということが該当します。

テナントの立退き料の場合、立退き料には営業補償などの名目の金員をテナント側から主張されることがあるため、相当高額になる傾向があります。

以上まとめますと

1 お父様の認知症が進行している場合には、まず成年後見人を選任する

2 契約の解除(更新の拒絶)は容易には認められないことを想定して、今後のビルの管理・処分を考える。

ということになります。


2015年11月30日更新

Q 私の父が持っていたアパートを相続しました。

200坪の土地に、2DKが4部屋の建物が建っています。

今は4部屋の内、1部屋だけ入居者がいますが家賃が遅れがちで、もう三ヶ月も溜まっています。

他の3部屋は募集をしていますが、なかなか契約が決まりません。

木造で21年も経過しているので、古いせいもあるかもしれません。

家賃が遅れている人への対応や、空室の悩みで悩んでいます。

いっそのこと、手放した方がいいでしょうか??

A せっかく遺産として相続した不動産ですから、まずは保有することを検討して、それが資金的な問題などで不可能な場合には売却を検討する、という順序で考えるのが良いでしょう。

保有が不可能で売却するとなった場合、このような不動産の場合、

①現状で売却、②満室にして売却、③家賃滞納者の立退完了後に更地にして売却

という3つの手段が考えられます。

以下、順番に検討していきましょう。

1 現状で売る場合

空室率が高いので、このままでは高値での売却が期待できません。

なお、売却する場合、家賃を滞納している入居者のことは買主への告知事項になるのではないかという問題があります。

買主がこういった賃貸物件を購入するには、家賃がしっかり入ってくるということが大きな動機になりますので、やはり家賃滞納者の存在については買主に重要事項説明で告知しなければなりません。

したがって現在遅れているということであれば、告知事項になります。

また、過去に度々遅れたことがある、ということも告知事項になります。

2 満室にして売る

上記の通り、現状で売る、となると相場よりも低い値段での売却も余儀なくされる可能性があります。

そこで、ある程度時間的、資金的な余裕が有るのであれば、売却するにしても、満室にしてから売るということも検討の余地があります。

管理会社に管理・募集等を委託している場合、そもそも管理会社がきちんと募集をしているのかということをチェックする必要があります。

その上で、適性家賃の設定やリフォームの必要性なども検討するなど入居者を呼び込む対策を検討しなければなりません。

もっとも、簡単に満室になるなら、売却しなくても良いかもしれませんが・・・

3 家賃滞納者を立退きした後で更地で売却

土地の形状や立地条件によっては、更地の状態で売却する方が高い収益を上げることができる可能性もあります。

そこで、建物を解体して更地にする必要がありますが、その前提として家賃滞納者を退去させる必要があります。

家賃滞納者へ立退きを求める場合、家賃の滞納が3ヶ月分以上に及んでいれば、裁判に持ち込んでもほぼ間違いなく退去が認められます。

もっとも、裁判を起こして、さらに強制的な追い出し(強制執行)まで行うとなると、弁護士費用や強制執行の費用も含めるとかなりの高額になってしまいます。

そこで、まずは内容証明郵便で解除通知を出して、滞納者が自発的に退去するよう促すところから進めます。内容証明郵便を出しても、滞納者が全然反応がないようであれば、弁護士名で内容証明郵便を出し、さらに訴訟提起、という流れで退去の手続を進めることになります。

また、このケースでは建物に対して土地が広くて有効活用できていない可能性が高いと考えられます。

そこで、土地を半分に分筆して売却するということも検討できます。

4 まとめ

いずれの手段を取るにしても

・家賃滞納者への対応

・空室の改善方法の検討

・投資効率の改善

同時並行して検討して行く必要があります。


2015年11月30日更新