Q 遺産として土地がありますが、相続人が5人いて相続人の誰が土地を取得するか話がまとまりません。また、誰もこの土地を欲しいという者もいません。

この場合、この土地はどのように遺産分割すべきでしょうか。

A 土地を競売にかけた上で、売れた代金を分けるという方法になります(換価分割)

遺産を分ける方法はいくつかありますが、原則的な方法は「現物分割」(まさにそのものを分ける)となります。

しかし、土地などの不動産の場合には、現物分割の方法に従ってそのまま法定相続分で土地を分けると、土地が細分化するなどして土地の利用価値がなくなる場合がほとんどです。

したがって、一般的な宅地が遺産の場合にはこの方法によることは出来ません。

そこで、次に考慮される方法としては、「代償分割」というものになります。

これは、誰かが土地を相続することと引き換えに、土地を相続しない相続人に対して法定相続分に相当する土地の価値相当額(代償金)を支払うという方法が検討されます。

しかし、誰も土地を欲しない場合や、そもそも代償金を支払えるような相続人がいない場合、最終的な手段として「換価分割」という方法になります。この方法は、不動産を競売にかけて、その競売代金を相続分に従って分割するという方法です。

もっとも、換価分割はあくまでも最終的な手段ですので、裁判所も簡単にはその方法での分割は認めないようです。

「現物分割」や「代償分割」が本当に不可能なのか、換価分割が本当にやむを得ないものなのかどうかを慎重に審理する傾向があります(仙台高決平成5年7月21日)。

現物分割も代償分割もできないような場合は、通常は、遺産分割調停の中で相続人間で不動産を仲介業者に委託して売却してもらいその売却代金を分割する旨の合意をし、その後に任意売却してその代金を分けるという方法がとられます。

競売にかけるよりも業者を通じた任意売却の方が売買代金も高くなりますので通常はこのような方向での話し合いがなされます。

しかし、不動産以外の遺産の分割で話し合い全てがこじれてしまったり、辺鄙な土地等で業者に委託してもなかなか売れないような不動産の場合には、やむを得ずに換価分割の方法をとり、不動産を競売にかけて不動産を処分するということになるのです。


【判旨:仙台高等裁判所平成5年7月21日決定】

「本件遺産につき、現物分割をすることが不可能であるとしても、直ちに、競売によりその代金を分割する方法を取ることは相当でない。」

「本件遺産につき、これを相続人のうちの特定の者(1人とは限らない。)に取得させて、取得者が債務を負担する方法をとることが可能であれば、競売による換価分割よりも望ましい方法であることは明らかである。ところが、原裁判所は、・・・抗告人ら及び相手方には本件遺産を取得する資力(分割支払い能力も含まれる。)を有する者はいないと認定して、債務負担の方法による遺産分割を否定しているが、相手方及び抗告人らに本件遺産を取得する資力を有する者はいないと認定するに足る充分な資料は一件記録からは明らかでない。」

「したがって、本件建物1の所有者である相手方及び抗告人甲野一郎、本件建物2の所有者である抗告人甲野三郎が本件宅地を利用している法律関係、本件遺産につき、これを相続人のうちの特定の者が取得して、取得者が債務を負担する方法が可能であるか否かにつき原裁判所は審理を尽くしていないというべきであり、これらの点につきなお審理を尽くさせる必要がある。」


2015年11月30日更新

遺産の不動産の分割について話合いで解決できなかった場合、裁判所の調停・審判ではどのように分割されるのでしょうか。

遺産の分け方というのは大きく分けて4つあります。

①現物分割

②代償分割

③換価分割

④共有分割

の4つです。

上記のうち、原則的な方法は、①の現物分割(まさにそのものを分ける)となります。

しかし、この分割方法は、例えば預金などのお金であれば単純に分けることも可能ですが、土地などの不動産の場合には、そのまま法定相続分に従って土地を分けると、例えば100㎡の土地を相続人4人で分けたら一人当たり25㎡になってしまい、もはや土地の利用価値がなくなってしまいます。

とても広い土地とかであれば別ですが、普通の住宅地などではまず意味のない分け方になってしまいますので、一般的な宅地が遺産の場合にはこの方法によることは出来きません。

次に考慮される方法としては、②の代償分割となります。

この方法は、誰かが土地を相続することと引き換えに、土地を相続しない相続人に対して法定相続分に相当する土地の価値相当額(代償金)を支払うという方法です。

しかし、誰も「そんな土地なんかいらない!」と言って欲しがらない場合はこの方法は使えませんし、また、都市部だと不動産の価値も高いことが多く、代償金額も数千万円になってしまいますので、誰も代償金を払えず・・・、ということも多いです。

そうなった場合、最終的な手段として③換価分割という方法が認められます。

この方法は、不動産を競売にかけて、その競売代金を相続分に従って分割するという方法です。

要は強制的にお金に変えて分けてしまう、という方法です。

話合いがつかなければ、裁判所はこの「換価分割」という方法の決定を下すことになります。

もっとも、この換価分割はあくまでも最終的な手段ですので、やはり裁判所も簡単にはその方法での分割は認めません。

現物分割や代償分割が本当に不可能なのか、換価分割がやむを得ないものなのかどうかを慎重に審理する傾向があります(仙台高等裁判所平成5年7月21日決定)。

なお、現物分割も代償分割もできないような場合は、通常は、遺産分割調停の中で「不動産を仲介業者に委託して不動産を売却してもらいその売却代金を分割する旨の合意」をし、その後に任意売却してその代金を分けるという方法がとられます。

競売だと市場価格の5割~7割くらいで処分されてしまいますが、仲介業者を通じた任意売却によれば、市場価格で売却されることがほとんどですので、売買代金も高くなります。したがって、現物分割も代償分割もできない場合は、このような方向の話合いになっていくことが多いです。

なお、裁判所が何らかの理由で「換価分割」も認めない、となった場合は、④の共有分割という分け方になります。

これは、不動産を法定相続分に従って、「共有」にするというものです。

もっとも、不動産を「共有」にしても、これはあくまでも問題を先送りにするだけということで、よほどの事情がない限りはこの方法は採られません。

仮に「共有」となった場合は、さらに、その後に別途「共有物分割請求訴訟」を提起して、分割を求めていく必要があります。


2015年11月30日更新

Q 父が死亡しました。

相続人は私と姉の二人だけですが、遺産分割の話合いがなかなか進まず、父が亡くなってから既に3年以上経過しています。

姉は、父が生きていた時から、父の自宅で父と同居しており、父が亡くなった後も姉は父の自宅に一人で住み続けています。

私の相続分は、父の自宅についても2分の1になるはずですが、遺産分割がまとまらない間も姉は遺産である父の自宅に無償で住み続けており、このままでは、年が経てば経つほど姉だけが得して不公平だと思います。

今後、いつ遺産分割がまとまるかもわかりませんので、姉に対して父の自宅に住んでいることについて賃料相当額(の半額)の請求をしたいと思っているのですが、これは認められるのでしょうか。

A 遺産分割協議が確定するまでの間は、賃料相当額の請求はできません。

相続による権利等の承継は、被相続人が亡くなった時点で発生します。

したがって、被相続人が亡くなった時点で、その遺産は、法律上は相続人に引き継がれて相続人全員の共有状態となります。

本件では、父の自宅も、父が亡くなった時点で子ども二人2分の1ずつの共有となります。

そうであるとすれば、父の自宅については父の死亡後から弟も2分の1の権利を持っていますので、2分の1については姉に対して「貸している」状態になり、従って、家賃の2分の1について請求できるようにも思われます。

しかし、このようなケースにおいて、最高裁判所平成8年12月17日判決は、

「遺産分割協議が成立するまでの間は、姉は無償で住むことができる」

と判断しています。

その理由について最高裁判所は

「被相続人と同居の相続人の間において、被相続人死亡後、遺産分割で建物の所有関係が確定するまでの間は、引き続き同居の相続人に建物を無償で使用させる旨の合意があったものと推認し、被相続人死亡後は、その他の相続人を貸主、同居の相続人を借主とする使用貸借関係が存在する

と述べています。

したがって、遺産分割協議が長引いたとしても、それが終了するまでは同居していた相続人は無償で遺産の不動産に居住を続けることができます。


2015年11月30日更新