不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

中古物件の売買において、老朽化した空調設備について瑕疵担保責任が発生するか

Q 築30年以上が経過しているテナントビルを売却しました。

売却後に、買主より

「ビルの空調設備について30年経過しており故障した場合に修理が不可能であることや、現在は一応作動するものの,異常に電力を消費し,しかも冷房効率も芳しくない状態であるにも拘らず、売買の際の重要事項説明書にその旨記載がなかった」

と言われ、瑕疵担保責任として空調設備交換費用等の2000万円の損害賠償を求められています。

古いビルですので、空調設備が経年劣化で老朽化していることは買主も当然承知していたものと思っていたのですが・・・賠償に応じなければならないのでしょうか。

A 売主側が空調設備について一定の品質・性能を保証したような事情がなければ、瑕疵担保責任を負いません。

質問の事案は、東京地裁平成26年5月23日判決のケースをモチーフにしたものです。

この事案は、昭和57年築のテナントビルを平成24年に売買した、という事案ですが、ビルの空調設備について以下の問題点がありました。

・業務用エアコンの法定耐用年数である15年を大幅に超える約30年を経過

・現在,運転状況に特段の問題はないものの,老朽化が進んでおり,経年劣化により消費電力が増加し,また,新品時のような冷暖房効率は発揮できない

・近い将来正常に作動しなくなり,修理が必要となった場合には,もはや部品を調達できず,空調設備の交換を余儀なくされるおそれがある

買主は上記の問題点を主張して、売主に対しては瑕疵担保責任、仲介業者に対しては、上記の問題点について重要事項説明書に記載がなかったとして不法行為責任を主張し、空調設備の交換費用等として2450万円の賠償を求めました。

売主の立場からすれば

「築30年以上前のビルなんだから、空調設備も古くて経年劣化しているのは当然買主もわかって買ったはずでは?なぜ後になって交換費用で莫大な費用を払わなければならないのか?」

と考えるのではないでしょうか。

となると、どのような理屈で買主の主張に対抗するかです。

この裁判例は、空調設備の老朽化を認めた上で、以下のように述べて、瑕疵担保責任を否定しました

「新築から長期間が経過したテナントビルの売買においては,これに付帯する空調設備も相応の経年劣化があり,上記のような問題点が存することは,容易に想定し得るものである。」

「また,原告代表者は,本件マンションに空調設備が存在することを認識していたものと認められるところ,被告が,原告に対し,本件マンションの空調設備について一定の品質・性能を保証したような事情を認めるに足りない。」

「したがって、本件各建物が本件売買において予定されていた品質・性能を欠いていたということはできず,民法570条にいう瑕疵があるということはできない。」

このように、経年劣化で老朽化した設備については、売主が「一定の品質・性能を保証」しなければ、瑕疵担保責任を負うことにはならない、というのが裁判所の考え方です。

なお、買主は、重要事項説明書に空調設備について記載がなかったことについて、仲介業者に説明義務違反があったと主張しましたが、これについても、裁判所は以下のように述べて仲介業者の責任を否定しています。

「不動産の売買を仲介する宅地建物取引業者は,通常の注意をもって取引物件の現状を目視により観察しその範囲で買主に説明すれば足り,これを超えた取引物件の品質,性状等についてまで調査,説明すべき義務を当然には負わないというべきであるところ,本件空調設備について,前記1(3)に説示したような経年劣化に伴う問題点があることは,原告において容易に想定し得たというべきであるから,この点について,被告Y2社が調査,説明すべき義務を負っていたとはいえない。」

以上のように、売主、仲介業者ともに責任を負うという結論にはならなかったのですが、もっとも、後の紛争を避けるためには、中古建物の売買・媒介の際、紛争の未然防止のため、買主に対し、付属設備も経年劣化していることや、交換部品の調達ができなくなることがあることを告げておくことが望ましいでしょう。


2016年5月19日更新