不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

建物を「現状有姿で引渡す」と約定した売買において、売主の瑕疵担保責任は免除されるか?

【質問:不動産の買主からの相談】

私は投資目的で、外国人留学生用のゲストハウス1棟を1億円で購入しました。

購入前は、建物の外観と共用部分は見ましたが、その他の部屋は,留学生らが借りていたため内覧はしませんでした。

売買契約では「現状有姿で引き渡す」と規定されていました。

 

建物の購入後、防水等の工事のため業者に調査してもらったところ、防水工事の不備による屋上からの雨漏りにより,居室内への漏水による床及び壁のカビによる被害,電気設備等の不具合その他の瑕疵があり,躯体鉄骨部分の補修,床・壁・天井の改修,壊れた洗面化粧台の撤去・取替,不適合な給湯器の撤去・取替等の工事を行わないとゲストハウスとして使用させることが不可能な状態であることが判明しました。

 

そこで、売主に対して瑕疵担保責任として上記の補修費用の請求をしたところ、売主からは、

「「現状有姿で引き渡す」と契約書に書いてあるから、瑕疵担保責任は負わない。」

と言われてしまいました。

このような約定がある場合、瑕疵担保責任は追求できないのでしょうか。

【説明】

中古住宅やマンション等の売買契約にあたっては、契約書で

「現状有姿にて引き渡す」

という条項が設定されることが多いです。

この文言を表面的に読めば「そのままの状態で引渡す」と言う意味になりますので、そこから「そのままの状態で引き渡せば足り、売主としては、引渡し後に何らかの欠陥があっても瑕疵担保責任は負わない」と解釈する余地があるようにも思われます。

しかし、法律的な観点から言えば、「現状有姿で引渡す」というのは、単に「そのままの状態で手を加えずに引渡す」という意味に過ぎないものとされており、瑕疵担保責任を免責するという解釈まではできないとされています。

したがって、売買において瑕疵担保責任を負わないとするためには、別途瑕疵担保責任の免責の特約を設定することが必要です。

もっとも、「現状有姿で引き渡す」と契約書で規定することにより、「瑕疵担保責任の範囲を限定する」効果を認めた裁判例があります。

それが、東京地方裁判所平成26年7月16日判決の事例です。

本件の事例は、この裁判例の事例をモチーフにしたものなのですが、この裁判例は、「現状有姿で引渡す」と契約書に書かれていたことにより、瑕疵担保責任の範囲について

「本件売買契約は,「現状有姿」とするものであって,売主は,売買契約の締結に当たって買主の知り得た瑕疵等の不具合については,瑕疵担保責任を負わないことが明らかである。」

とした上で、売買契約前に買主の内覧を妨げるような事情が存在しない場合には、売主は、「内覧をしても判明し得なかったような「瑕疵」については責任を負うが外観,内観上の汚れ,カビ,破損等についてまで損害賠償責任を負うものと解することはできない。

と述べました。

以上を前提として、裁判所はこの事例において、買主が主張する瑕疵について、

①給湯器の不完全燃焼による給湯停止

②103号室の漏水

③屋上部分の防水の欠陥

については,その位置や状況,性質等に照らし,内覧によっても直ちに発見,確認することは困難であると推認されるものであって,瑕疵担保責任を負うと判断しました。

他方で、これ以外の

④カビの発生

⑤クロスのたばこのやに等による部屋の汚れ

については,内覧によって判明し得るものであって,「現状有姿」で買い受けた以上,買主自らが対応すべきものというほかはない。

と判断しました。

実務上は、「現状有姿」売買の意味が誤って利用されている例も未だ散見されますので、瑕疵担保責任との関係で注意が必要です。


2019年7月31日更新