不動産事例紹介

借地借家・建築・境界等の不動産問題について、弁護士が問題解決のための道標となる裁判例(CASE STUDIES)等を詳しく解説しています。

竣工から16年経過後に発生した住宅の雨漏りについて、施工不良が原因であるとして施工会社への不法行為責任に基づく損害賠償が認められた事例

Q 築16年が経過した賃貸アパートを購入しました。

しかし、アパートの一室で、エアコン冷媒管・排水ドレンの引き込み口として使用されていた外壁の貫通孔部分に施工不良があったようで、台風で大雨が降った日に、そこから雨水が侵入して室内に漏水が発生するという事故が起きました。

このような瑕疵があるとは売主から聞いていませんでしたので、売主に瑕疵担保責任を追及したいのですが、売主は倒産してしまったため責任追及が出来ません。

このアパートを施工した施工業者に責任追及はできるでしょうか?

A 建物の施工者は,建物建築に当たり,居住者ほかの建物利用者や隣人,通行人等(以下,併せて「居住者等」という。)に対する関係では,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するとされています。

そして、施工者がこの義務を怠ったために建築された建物に「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」があり,「それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合」には,施工者は,不法行為による賠償責任を負う

というのが、最高裁判所の判例です(最高裁平成19年7月6日判決,最高裁平成23年7月21日判決)。

この不法行為責任というのは、建物完成時から最大で20年間責任追及が可能ですので、瑕疵担保責任の主張期間が過ぎてしまった場合や、質問のケースのように、売買の契約当事者(売主)が破産等していて責任追及できない場合に主張されます。

したがって、本件のケースでも、施工業者に責任追及するためには、この不法行為責任を主張する必要があります。

もっとも、上記で述べた通り、単に建物に瑕疵がある、という程度では不法行為責任は認められず、

「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」があり,「それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合」

に限って不法行為責任が認められることになります。

では、本件のケースの場合に、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があると言えるのでしょうか。

本件のケースは、東京地方裁判所平成26年12月15日判決をモチーフにした事例です。

裁判所は、雨水の建物内への侵入について

「住居用建物の屋内に雨水が浸入するということ自体,建物本来の機能,性能が著しく阻害されるといえる上,浸入した雨水が屋内に滞留することによりカビの発生や木部の腐朽などの二次被害も発生しかねない。よって,本件貫通孔の防水処理が不十分であったことは,本件建物の基本的安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である。」

として、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると認定しました。

そして、施工会社の施工不良について

「一般に,建物駆体に設けられた貫通孔にエアコン冷媒管等の配管を施工する場合には,開口部をパテ又はコーキング材で充填して穴仕舞を行い,風水が屋内に入らないように施工することが必要とされている。また,貫通孔から屋外に出たエアコン冷媒管等を覆うカバーについてもカバー周りから雨水が浸入するのを防止するため縁にコーキングを施すことが推奨されている。

以上によれば,被告は,本件建物を施工するに際し,本件貫通孔及び本件各貫通孔から風水が屋内に浸入するのを防止するために上記のような施工をすべき注意義務を負っていたというべきである。

しかるに,被告には上記の注意義務を怠った過失があるというべきである。」

として、施工業者の施工不良の責任を認め、損害賠償責任を認めました。

この裁判例のポイントとしては

①貫通孔の施工不良により発生した屋内の漏水について「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に該当すること

②建物の竣工後約16年後に発生した漏水事故であっても施工業者が責任を負うこともあり得る

という点です。

なお、竣工から16年経過していれば、経年劣化により漏水事故が発生することも想定されますので、施工不良が原因か、経年劣化か原因かが争われて、紛争が複雑かつ長期化してしまう場合も有りえます。

したがいまして、このような紛争を避けるためにも、竣工から長期間が経過した中古住宅の売買に際しては、契約当事者はインスペクションを利用することが望ましいと言えます。


2017年5月8日更新